津家庭裁判所 昭和43年(少ハ)5号 決定 1968年6月29日
本人 R・S(昭二二・四・三生)
主文
本人を昭和四三年一二月二一日まで愛知少年院に継続して収容する。
理由
本件申請の要旨は「本人は昭和四一年一一月二二日津家庭裁判所において窃盗強姦等により特別少年院に送致する旨の決定を受け、同日特別少年院である愛知少年院に収容せられたが、昭和四二年一一月二一日をもつて少年院法第一一条第一項但書所定の一年の期間を満了することになつたため同少年院長より収容継続の申請をなし、同裁判所において同年一一月一八日付で昭和四三年六月二一日まで継続して収容する旨の決定があつて現在まで収容保護を加えてきたものである。
しかるところ少年は右収容継続決定のあつた直後、ほか三名と共謀して深夜寮舎を破壊して逃走し、しかも逃走に当つては主謀的役割を果したものであり、当院に連れ戻されたうえも更に逃走を計画するなどして、自棄的で落着きのない生活がつづいていた。以上のように当院における矯正教育はその効果が挙つていないためこのまま社会に復帰せしめるならば再び非行を犯すことは明白であるので、なお収容継続を加える必要がある。」というのである。
よつて案ずるに、一件記録に徴すれば少年が昭和四一年一一月二二日津家庭裁判所において特別少年院送致決定を受けたこと及びその後の経過については上記申請理由のとおりであるところ、少年院法第一一条の趣旨は少年保護の目的に立脚するものであるから、同条第二項の実質的要件を充足しかつ少年の保護の目的を全うするに必要であるかぎり二三歳に達するまでは繰り返して収容継続をなすことを許すものと解するのが相当である。そこで上記実質的要件の有無につき検討すると、本件審理の結果によれば
(1) 前回収容継続審判があつた当時の成績では特別の事情が発生しないかぎりおそくとも昭和四三年三月中には出院可能の見込であつたが、上記のとおりの予測しえなかつた逃走事故により成績がいちじるしく下降したこと。
(2) さらにその後も自暴自棄的で落着きのない生活がかなりつづいたこと。等の事情もあつて、最近徐々に好転していることは認められても、このまま収容継続の期間満了をもつて退院させるには、まだ犯罪的傾向が矯正せられておらず出院させるに不適当な段階であると認めざるをえない状況にある事実が認められる。
しかも本人の在院成績が最近において社会性賦与の面で漸次向上を示してきたことは上記のとおりであるから本人をさらに継続して収容することはその保護の目的を全うする所以であると思料せられる。
しかしてその期間は
<1> 少年院の収容がかなり長期にわたつていること。
<2> 受入態勢はおおむね整つていること。
<3> 再度の収容継続申請であること。
その他諸般の事情を考え合わせれば昭和四三年一二月二一日までと定めるのを相当と考える。よつて本件申請は理由があるのでこれを認容することとし、少年院法第一一条第四項に則り主文のとおり決定する。
(裁判官 辻下文雄)